着色ガラスをつくろう
大学祭期間中、日本化学会の援助を受けて大窪とTA2名で高校生用の化学教室を開催しました。原料である結晶材料が溶融し、急冷固化でガラス構造となる様子を分子動力学計算から作った動画で説明しました。配布した資料はこちら。
ガラスと石英の構造
結晶-溶融-急冷-ガラス
はじめに
建物や車の窓ガラス、飲料の入れ物としての瓶ガラス、食器やカメラのレンズ等、身の回りにあるものの多くにガラスは使われています。紀元前3000年頃のエジプトでもすでにガラスの装飾品や小さな容器が作られていました。また、火山の噴火で地下のマグマが液状に流れでて急に固まってできる黒曜石は、天然のガラスとして知られています。純粋なガラスは、無色透明です。しかし、何でも溶かしこむことのできるガラスの性質を利用して、特定の光だけを吸収する物質をガラスの中に入れると、色ガラスになります。周期表にあるたくさんの元素を眺めながら、原料から色ガラスを自分で作ってみて、ガラスに色がつく原理を考えてみましょう。
注意事項
- 強熱したるつぼやモールドに触れないよう注意する。
- 薬品が肌に付着したら水で洗い流す。
- 実験操作でわからないことがあったら、先生やアシスタントに質問する。
実験手順
ガラス材料と着色材料の秤量と混合
- 電子天秤で薬包紙と薬さじを使ってガラス原料を秤量し、乳鉢に入れます。
原料 化学式 重量(g) ホウ砂 Na2B4O7 7.0 ケイ砂 SiO2 1.0 - 同じように以下の着色原料のいずれかを秤量し、乳鉢に入れます。
遷移金属元素 原料 化学式 重量(g) クロム酸カリウム K2CrO7 0.05 過マンガン酸カリウム KMnO4 0.01 酸化鉄 Fe2O3 0.05 塩化コバルト CoCl2 0.05 酸化ニッケル NiO 0.01 硫酸銅 CuSO4・5H2O 0.05 ランタノイド 原料 化学式 重量(g) 酸化セリウム CeO2 0.1 酸化プラセオジム Pr2O3 0.1 酸化ネオジウム Nd2O3 0.2 酸化サマリウム Sm2O3 0.3 酸化ホルミウム Ho2O3 0.3 酸化エルビウム Er2O3 0.2 - 乳棒を使って粉末が均一になるよう15分程度、混合します。
ガラス材料の溶融
- るつぼに混合した薬品をすべて移します。
- 自分のるつぼを判別するために、筆を使って絵の具で、るつぼに印をつけます。
- るつぼを1000℃の電気炉に投入します。電気炉に入れた時間をメモします。投入時間 :
- ときどき覗きながら15分くらい電気炉の中で完全に溶融させます。
急冷固化
- 電気炉からるつぼから取り出します。取り出した時間をメモします。取り出し時間 :
(電気炉からのるつぼの取り出しはアシスタントが行います!) - すばやく400℃に熱したモールドの上にガラス融体をたらします。
- そのまま15分くらいモールドの上で冷やします。
除冷
- 銅板の上で固化したガラスをピンセットで拾います。
- ガラス全体が均一に冷えるようにドライヤーの風をあてます。
- 10分くらい冷やします。
- 薬包紙の上でガラスに透明マニキュアを塗って、乾かせば完成!
紫外可視分光光度計測定
- 隣の実験室で紫外可視分光光度計にガラスをセットして測定を行います。
- 測定は、アシスタントに手伝ってもらいましょう。
- 測定したチャートを下の図に書き写します。
- 右図の光の色と補色の関係からガラスの色の起源を考えます。
大窪 貴洋 (千葉大学) ※著者に許可なく無断転載を禁止します。2018年11月4日