10研究室は、無機・計測化学領域ですが、どちらかというと物理化学をベースに、シミュレーションや実験でエネルギーや環境問題に関連したいろいろな応用研究を行う研究室です。電池材料や二酸化炭素の固定化等、社会的要請の高い応用研究に少しでも興味があれば研究室を志望してもらえればと思います。有機材料の研究も行っています。
研究室で身につくこと
電子・原子構造に基づく化学
物質の特性は、物質を構成する電子や原子の構造から決定されます。研究室での無機材料の合成、物性評価、構造解析を通じて電子・原子レベルから物性をイメージできる技術者・研究者を育成します。総当たり的な材料開発も時には大切ですが、電子や原子構造をイメージしながら無機材料開発が行えるようトレーニングします。
分光学的な構造解析手法
研究室では、X線・中性子線回折、核磁気共鳴、Raman等の手法を駆使して無機材料の解析を行います。解析理論に基づいた独自アプローチの開発と応用も展開しています。また外部機関に出向いて強力な磁場を利用した核磁気共鳴実験や放射光を利用した実験も行っています。これら実験を通じて、他では身につけることのできない理論と実践に基づいた高度な解析技術を身につけることができます。
シミュレーションとデータサイエンス
計算化学による物質のモデリング、または実験の自動化やデータ解析において、計算機の利用は必須になります。計算機が使える人とは、単にソフトウェアを利用するだけではなく、計算機資源を最大限活用し、実材料の開発やプロセスに応用できる人のことです。そのためには、プログラミング、ネットワーク、OS等の知識を身につけるとともに、計算化学の適用範囲を理解する必要があります。研究室では、簡単なデータ処理のプログラムから、機械学習プログラミングまで科学計算に必要な技能を身につけてもらい、自分のアイデアを目の前のコンピュータで、すぐに具体化できるよう訓練します。
実験と計算をバランス良く
研究室では、第一原理計算や分子動力学計算等の化学に関係した計算機シミュレーションを行う場合がありますが、必ず実験とシミュレーションの両方から物事を考えます。実験とシミュレーションの限界を理解して、新しい化学の分野を切り開ける技術者・研究者になって欲しいと考えています。
共同研究
企業や他大学、他研究機関と積極的に共同研究を行っています。特に企業との共同研究は研究成果の社会還元、化学工業の中での課題発見の意味で積極的に行っています。卒論・修論の研究テーマも企業との共同研究と関連しているものが多く、実践的な研究を経験できます。
2024年度の共同研究・プロジェクト
- 太平洋セメント (セメント物質中の放射性核種の挙動解析)
- NEDOグリーンイノベーション (カルシウム水和物へのCO2の固定化)
- NEDO先導研究 (低温型電解法によるアルミニウムの高純度化プロセスの研究)
- 三菱総合研究所 (放射線照射による鉱物の構造変化)
- 出光興産株式会社 (固体電解質中のイオン伝導機構の解析)
- 日本原子力研究開発機構 (天然有機物の粘土鉱物への吸着)
- 科研費B代表 (NMRによる全固体電池の界面・表面状態解析とイオン伝導現象の関係解明研究)
- 科研費学変(A)代表 (機械学習によるNMRパラメータの解釈と原子構造推定データフローの構築)
- 科研費A分担 (C-A-S-H系水和物生成メカニズムの解明とCa投入量最適化セメントの開発
- 科研費B分担 (融合的アプローチで拓く木質資源の分離・解析・高度利用)
- 科研費B分担 (準弾性散乱・理論を併用したガラス構造中のLiイオンダイナミクスの解明)
大学院に進学しよう
卒業研究で研究室に1年間在籍しただけでは、受身の勉強だけで卒業することになってしまいます。研究の醍醐味は、自分のアイデアを具体化し自主的に研究を展開することです。大学院に進学する学生は、なるべく自分でテーマを考え自主的に研究を進めてもらいたいと考えています。そのためにも4年生でしっかりと研究の基礎を固め大学院にて、自分のアイデアに基づいた研究に熱中してもらいたいと思います。また無機材料の物性や構造を研究対象としているということもあり、化学以外の他学科からの進学も歓迎しています。