研究内容

コンセプト

本研究室では、計算化学や核磁気共鳴法による材料解析技術を基盤として、電池材料、放射性廃棄物の処分、二酸化炭素の固定化など、社会的に重要な課題に関わる材料研究を行っています。これらの研究は、国内の企業や大学、国立研究所、米国・フランスなどとの共同研究を、国の研究プロジェクトとして進めています。基礎科学に基づいて材料中の現象を理解し、その知見を実社会で求められる材料開発や安全性評価へつなげることを目指しています。

計算化学による材料研究

計算化学を利用した分子設計は、計算機性能やソフトウェアの発展により、合成化学を専門とする研究者にとっても身近な手法になりつつあります。一方で、固体材料の中で起こる電子のふるまいや、原子・イオン・分子のダイナミクスを正確に理解し、材料設計に結びつけることは、今なお大きな挑戦です。本研究室では、材料開発と並行して、古典分子動力学計算、第一原理計算、第一原理分子動力学計算などの計算科学手法を活用し、材料中で起こる現象を原子・分子レベルから明らかにする研究を行っています。また、シミュレーションで得られたデータと機械学習などのデータサイエンスを組み合わせることで、新しい材料探索や物性予測にも取り組んでいます。

計算結果は数値データとして解析するだけでなく、原子やイオンの動きを可視化することで、材料中で何が起こっているのかを直感的に理解することができます。研究室で作成したシミュレーションムービーもぜひご覧ください。

核磁気共鳴による材料解析技術の開発と応用

核磁気共鳴法、NMRは、物質中の原子核を通して、分子やイオンの構造、運動性、相互作用を調べることができる強力な分析手法です。本研究室では、NMR実験で観測されるさまざまな相互作用を利用して、材料中の分子運動や局所構造を評価するための解析法を開発しています。特に、固体材料や複雑な無機・有機材料に対して、NMRから得られる情報をどのように材料設計へつなげるかを重視しています。また、NMR実験から得られる大量のデータを効率よく解析するためのプログラム開発や、実験とデータサイエンスを融合した解析手法の開発にも取り組んでいます。実験、計算、データ解析を組み合わせることで、従来の手法だけでは見えにくかった材料中の構造やダイナミクスの解明を目指しています。

 

全固体電池のための固体電解質の材料解析と開発

全固体電池は、高いエネルギー密度と安全性を両立できる次世代電池として期待されています。本研究室では、固体電解質中でイオンがどのような経路を通って移動するのか、また、どのような構造が高いイオン伝導性につながるのかを、分子シミュレーションや固体NMRを用いて調べています。得られた知見をもとに、より高いイオン伝導性を示す材料の設計と開発に取り組んでいます。

高レベル放射性廃棄物の処分研究

原子力発電に伴って発生する高レベル放射性廃棄物を長期にわたって安全に処分するためには、処分環境で材料や鉱物がどのように変化し、放射性核種がどのように移動・吸着するのかを理解することが重要です。本研究室では、廃棄物ガラスが水と反応して形成する表面変質相や、天然鉱物への放射性核種の吸着状態を、実験・計算の両面から明らかにする研究を行っています。これにより、高レベル放射性廃棄物処分の安全性評価や、より信頼性の高い処分システムの設計に貢献することを目指しています。

 

二酸化炭素の固定化プロセス研究

二酸化炭素を安定な炭酸塩鉱物として固定化する技術は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて重要な研究課題の一つです。本研究室では、二酸化炭素が炭酸イオンとなり、さらに炭酸塩鉱物として結晶成長していく過程を、実験・計算・データ解析を組み合わせて研究しています。炭酸塩鉱物がどのように生成し、どのような条件で安定化するのかを理解することで、二酸化炭素固定化プロセスの高度化や将来予測につなげることを目指しています。